音楽・ジャズ・ポップス

ビートルズ入門(その4)後期(1/2)

ビートルズの音楽は初期、中期、前期に分けることができます。この分類は人それぞれで、公式のものがあるわけではありません。ここではぼくの分類に従ってご紹介しています。

ぼくが考える初期は、ロック大好き少年たちがアイドルグループとしてデビュー。大人気になった時期。この時期は若々しいエネルギーはあるものの、まだバンドとしての個性はそれほどなく、オリジナリティ、創造性の部分もまだ現れていません。
初期のアルバムの紹介は、ビートルズ入門その2をご覧ください。

ビートルズの中期は、ポピュラーグループとして創造性とオリジナリティーがあり、個性を確立した時期です。イエスタデイ、ヘルプなどの名曲も生み出しました。
中期の作品の紹介はビートルズ入門その3をご覧ください。

そして解散までの後期は、ビートルズが真に非凡なグループ、歴史的なグループであることを証明した時期です。後期の作品群はアルバム一枚一枚が珠玉の名作となっています。ビートルズは後期によって音楽の可能性を追求し、ロックを芸術にまで高めました。そしてあたかも熟しきった果実が木から離れて落下するように、ビートルズは解散することになるのです。ビートルズの後期の作品は次の6作です。

  • 1 Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band
  • 2 Magical Mystery Tour
  • 3 The Beatles (White Album)
  • 4 Yellow Submarine
  • 5 Abby Road
  • 6 Let It Be

ここでは後期の前半、”Yellow Submarine”までをご紹介します。

1 Sgt. Pepper’s Lonely hearts Club Band

サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド。(ペッパー軍曹の寂しい心クラブバンド)は、ビートルズの最高傑作だとぼくは思います。アルバムとして一つの世界を作り出していて、まるでロック・オペラとでも言うべき完成度の高さです。一曲一曲というより、アルバム一枚が一つの作品になっているのです。良い曲ももちろんあります。でも、シングルカットしてしまうと魅力が半減してしまう。アルバムの中にあるから良いのです。全部で13曲あるのですが、1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1=13ではなくて、20にも30にもなる。そんな感じです。コース料理に例えてもよいかもしれません。前菜、スープ、魚料理、肉料理、ワイン、デザート、コーヒー。全てを合わせて一つの料理になっているんです。ぜひ、最初の曲から最後まで通してお楽しみください。それからこのアルバムで、ビートルズはエレキギター、ベース、ドラムという編成にこだわっていません。インド楽器あり、ハープあり。彼らの音楽表現に必要な楽器を選択しています。

さてビートルズで英語表現を覚えるコーナー。笑 ここではShe’s Leaving Homeをとりあげたいと思います。少女が家出する情景を映画のシーンのように描写している曲。この曲に影響されてイギリスでは少女の家出が増加したという問題作でもあります。英語表現としては、この歌を覚えると分詞構文が身につきます。笑 〜ing という形は、「〜して」という副詞句を作るのです。

Wednesday morning at five o’clock as the day begins,
Silently closing her bedroom door,
Leaving the note that she hoped (she) would say more,
She goes downstairs to the kitchen…

水曜日の朝五時、一日が始まると、
しずかに寝室のドアを閉じて、(分詞構文)
十分に書ききれなかった書き置きを残して(分詞構文)
彼女は階下の台所へ行った…

ね。まるで映画のワンシーンみたいでしょ?


楽天ブックスで購入の場合は→こちらへ

2 Magical Mystery Tour

マジカル・ミステリー・ツアーも統一感のあるアルバム。同名の映画があります。このアルバムは一言でいうと、サイケデリック。70年代、若者にドラッグの文化が花咲きます。70年代の時代背景については、ビートルズ入門その1でも詳しく説明していますが、この時代は、反戦、平和、若者文化の誕生でした。そしてその文化の一要素としてドラッグがあったのです。このアルバムはドラッグでハイになった幻想を描いたような怪しい雰囲気に満ちています。それで、Sgt. Pepper’sと比べると、マニアックというか、一般受けしない内容になっているとも言えます。でも、ぼくはこのアルバムは大好き。Sgt. Pepper’s が表の世界だとすると、このマジカルミステリーツアーは、裏の世界。人間の心には光と闇がありますけれど、闇の世界に惹かれるからかも知れません。笑

今日の英語表現は、”Strawberry Fields Forever” から。まさにドラッグの幻想を描写した曲なのですが、出だしの、”Let me take you down, cause I’m going to Strawberry Fields.” の一文は、使役動詞のletを学ぶのに良い文章です。使役動詞で良く使うのは、make と let。両方とも「〜に〜させる」という意味なのですが、makeは強制の意味。letは許可の意味で、命令文になると、「ぼくに〜させて(許可してください)」という時によく使います。 なので、この一文は、「ぼく、ストロベリーフィールズにいくから、きみも連れて行ってもいいかな?(連れて行かせてくれますか?)」という意味になります。そんな怪しいドラッグの世界に連れて行かれたくないですけどね。笑

楽天ブックスで購入の場合は→こちらへ

3 The Beatles (White Album)

「ザ・ビートルズ」通称ホワイトアルバムはぼくの一番好きなアルバム。二枚組です。アルバムの統一性というものはありません。作品っていう感じじゃないんです。例えて言うと、Sgt. Pepper’s が一つの小説、文学作品だとすると、ホワイトアルバムはエッセイ集みたいな感じなのです。この時期のビートルズが集まって、色々な曲を作り、収録したみたいな。でもぼくはその方の抜けた感じが好きです。大好きなエッセイをひもとくみたいに、ちょっと時間の空いた午後なんかに、窓の外を見ながら聞きたい。

もともとLPというフォーマットで発売されていましたから、二枚組というのは、各LPにAB両面があるので4つの部分に分かれているのです。1枚目の A面はロック。ここには、ジョージの最高傑作、”While My Guitar Gently Weeps”が収められています。リードギターはエリック・クラプトン。ジョージと全然違う! 笑 本当に素晴らしいリードギターですよ。本当にギターが泣いているんです。(gently weeps) ジョージとクラプトンは仲が良くて、クラプトンは、ジョージと離婚したパティ・ボイドと結婚しています。クラプトンの最高傑作「レイラ」は、パティ・ボイドのために作った曲なんですって。ワオ。

1枚目のB面に入ると、”Martha My Dear” のピアノが耳に飛び込んできます。おや!っとさせられるんですね。1枚目のB面はものすごくシンプルなアコースティックサウンド。オーケストラや特殊効果を一切廃したナチュラルな曲が多くて癒されます。特に”Black Bird” “Julia”が美しいです。このアルバムでの英語例文は、”Rocky Racoon”から。”Rocky Racoon checked into his room only to find Gideon’s bible.” これは「to 不定詞」の結果の用法が学べます。笑 to do という形の不定詞は、「〜するために」という副詞的用法と、「〜するための」という形容詞的用法があるのですが、「その結果、〜した」という結果という用法(副詞的用法の一種)があるんです。なので、この文章は「ロッキー・ラクーンは自分のヘアにチェックインした。そしてギデオンの聖書を見つけた。」という意味になるんです。ギデオンの聖書というのは、聖書を無料で配布するギデオン協会という団体があって、よくホテルなんかに備えられている、あの聖書のことです。

ホワイトアルバムの2枚目はちょっとけだるい感じ。レボリューションナンバー9なんて、悪ふざけの録音をそのまま使ったみたい。でも、そういうふざけた側面も楽しめるので、エッセイ集のようなアルバムと申し上げた訳なのです。ぼくは2枚目を聴く頻度は1枚目より少ないですね。笑

楽天ブックスで購入の場合は→こちらへ

4 Yellow Submarine

イエロー・サブマリンにも同名の映画があります。こちらはアニメで、ものすごくおしゃれ。戦争反対がテーマで、「戦争に勝つものは愛」「ラブ・アンド・ピース」という70年代の若者文化の精神がテーマになっています。

このアルバムにはインド音楽と電子音楽に影響を受けたジョージの、”Only A Northan Song” と “It’s All Too Much” が収録されています。ぼくはこの2曲、結構好きなんですけど、やっぱりマニア向けですね。

英語表現としては、”Yellow Submarine”を使いたいと思います。出だしの、”In the town where I was born lived a man who sailed to sea.”という文章。この文章では関係詞が学べます。笑 “the town where I was born” は、「僕が生まれた町」という意味。 “a man who sailed to sea” は「海を航海した男」。関係詞が難しいのは、関係詞というのは形容詞節を作るための道具なのですが、日本語では形容詞節は名詞の前に来るのに対して、英語では名詞の後ろに来るんです。それで苦手な人が多いのですね。逆にいうと、関係詞を使った文章をいくつか暗記して体に染み込ませてしまうと、英語が一気に分かるようになりますよ。ちなみに、”lived a man”の所は倒置が起こっていて、本来は “A man lived”の語順なんですけど、形容詞節をつける関係で倒置が起こったのです。

このアルバムは正直に言って、マニア向けです。後半は、全てジョージ・マーチンが映画用に作ったサウンドトラックで、オーケストラの曲になっています。ジョージ・マーチンはビートルズの曲にオーケストラサウンドを加える時のアレンジャーです。とても良い仕事をする人なんですけど、彼のオーケストラ曲をずっと聴かされると、それは申し訳ないけど正直、苦痛です。笑 オーケストラアレンジができるというのは技術なのです。でも人に感銘を与える音楽を作るというのは才能。ジョージマーチンの才能は凡庸です。そしてビートルズは天才。そういうことなのだと思います。

楽天ブックスで購入の場合は→こちらへ

ビートルズ入門その5(後期)2/2

ビートルズ入門その3にもどる

ホーム

ABOUT ME
つじもと ひでお
こんにちは、つじもとひでおです。大学卒業後、ビール会社に5年間勤めたあと、30年間、高校で英語を教えていました。部活動はジャズバンドの指導もしていました。現在も、新潟ジュニアジャズオーケストラで小学校から高校までの子どもたちにジャズを教えています。